大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)2649号 判決

被告人 呉災生

〔抄 録〕

控訴趣意第二点について。

原判決が被告人に対し密輸出にかかるベアリング一三八〇個の原価に相当する金四二八一九八円の追徴を言い渡していることは所論のとおりである。そして記録によると、原裁判所は右密輸出の罪の共同正犯である原審相被告人許尚文、同中島四郎、同彭浩霆に対しても各別にそれぞれ右密輸出にかかるベアリング一三八〇個の原価に相当する金四二八一九八円の追徴を言渡していることが認められるのであるが、原判決が判示(甲)の事実認定に引用している証拠によれば、右密輸出にかかるベアリング一三八〇個は被告人と原審相被告人許尚文とが密輸出することを共謀した上被告人がその買受資金を右許尚文に融通し、同人が商社に交渉して買い受けたもので両名が共同して入手した両名所有の物件であつたことを認めることができるのみならず、旧関税法第八三条第三項は密輸出の罪の共同正犯が数人ある場合に密輸出にかかる貨物を没收することができないときは、共同正犯である各犯人から各別にそれぞれその貨物の原価に相当する金額を追徴する法意であると解すべきであるから、右原判決引用の証拠により既に右ベアリング一三八〇個が密輸出され、その全部が没収できないものであることの認められる本件において原裁判所が被告人等に対し各別にそれぞれ右ベアリングの原価に相当する金四二八一九八円の追徴を言い渡していることは正当である。又原裁判所がこのように被告人等に対し各別にそれぞれ追徴を言い渡していても、もとよりこれによつて被告人等の全員に対し重複してその全部について執行することが許されているものではなく、そのうち一人に対し全部の執行が了れば他の者に対しては執行することができないわけであるから、原判決が被告人に対し右ベアリングの原価に相当する金四二八一九八円の追徴を言い渡すことにより、所論のように右ベアリングを没収した場合に比し四倍の原価に相当する金額を追徴することとなるものではない。しからば原判決には所論のような法令適用の誤はなく、論旨は理由がない。

(加納 吉田作 山岸)

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